盛岡ノートー立原道造ー [詩]
「盛岡ノート」昭和13年8月〜10月
はじめての夜。
もう眠ろう、爽やかな眠りよ、もう僕の言葉は一度
お前の闇をとおって ふたたび光に変わるとき あたらしい
しらべを 血肉を 得るだろう。
『立原道造全集』第四巻
堕天使に施し [詩]
堕天使に施し与え回心には関与しないさ瞬く終末
*地球がスパーンと竹を割ったように真っ二つに割れる。
その切断面の黒曜石を磨いた様ななめらかな輝きそして
粉々に小惑星群の様にチリに帰る。スパーンと真っ二つだ。
君らが僕の魂と亡き僕の畏友に為した如く。
*地球がスパーンと竹を割ったように真っ二つに割れる。
その切断面の黒曜石を磨いた様ななめらかな輝きそして
粉々に小惑星群の様にチリに帰る。スパーンと真っ二つだ。
君らが僕の魂と亡き僕の畏友に為した如く。
盛岡ノートー立原道造ー [詩]
「盛岡ノート」昭和13年8月〜10月
汽車は山形をすぎたーー灯火管制の最中で町はまっくらだ
ここに降りても案内がわからないので 楯岡まで行くことに
した………窓はみな鎧戸をおろしている
『立原道造全集』第四巻
火山灰ノート昭和13年8月ー立原道造ー [詩]
「火山灰」ノート
この村でのくらし。あたらしいくらし。
ちょうど五年目に、いくつもの文字と空白のあと、
ノオトをおえる最後の紙に来た。僕はどんなにしても
光をもとうとおもう。どんなにしてもくらくてはいけない、
僕のあたらしいくらしは!今は何も追憶するまい。
昭和13年8月12日ー立原道造ー