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『ほんとの力』高村光太郎 昭和19年 [詩]


『ほんとの力』高村光太郎
昭和19年6月20日作

いよいよ来た。
いくさがみんなの
あたまの上にやってきた。
これからが日本人の
ほんとうの力の出てくる時だ。
あぶない時ほど強くなり、
こまる時ほど平気になり、
せっぱつまった時に跳ねかえし、
死にそうな時に勝を得るのが
昔から日本人の魂だ。
どんなことがあろうとも
ぼくらはむちゃくちゃにならない。
ふだんの覚悟をわすれない。
地震がいつそこで破裂しても
家の中で歌もうたえる。
家のへりに咲く花を見れば
やっぱりきれいだなと思う。
いつでも心に日の丸がはためき、
いつでも勇気りんりんだ。
ぼくらはどこのどんな国々と
なぜ戦うのかを知っている。
自分ひとりえらくなろうとする
敵の輩とぼくらはちがう。
ぼくらはみんな神々の末孫で、
ひとしく 大御心をいただいて
一国一家、力をきたえる。
世界団欒の希望にもえる
ほんとうの力が出てくる。
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